『シビル・ウォー アメリカ最後の日』見てきました。

普通に見たら超つまらない映画と酷評されることでしょう。

アメリカの政治背景について知らないと、この映画は何を伝えたいのかがわかりません。

アメリカでは公開2週連続1位ということですが、アメリカ以外では厳しいのではないでしょうか。

ただ、監督のアレックス・ガーランドはメッセージ性の強い映画を撮る人。「エクス・マキナ」や「アナイアレーション」もそうでした。

開始5分で嫌な予感がして、10分くらいから睡魔と戦いつつも、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』でアレックス・ガーランドが伝えたかったメッセージを考察してみます。

シビル・ウォー アメリカ最後の日あらすじ

『シビル・ウォー/アメリカ最後の日』は、近未来のアメリカを舞台にしたディストピア映画で、再び内戦状態に陥った国が混乱と暴力に包まれる様子を描いています。

あらすじ:
アメリカは経済危機や政治的な対立によって国が二分され、国家崩壊の危機に直面しています。

政府の影響力は弱まり、街には無法地帯が広がり、暴力や暴動が至るところで起こっています。

国民は対立する派閥に分かれており、誰もが生き残るために必死で戦っています。

物語は、混沌とした状況下で必死に生き延びようとする普通の市民や、内戦の嵐に巻き込まれた人々を中心に進みます。

それぞれが信念や価値観に従い、分裂した国で自分の道を模索しながら、国家の再統一や平和を取り戻す希望を探し求めていきます。

この映画は、分断と暴力の中で生きる人々の苦悩や葛藤を描きながら、現代社会が抱える問題やその行く末に警鐘を鳴らす作品です。

シビル・ウォー アメリカ最後の日キャスト

  • リー・スミス(演:キルスティン・ダンスト):ベテランの報道カメラマン。多くの紛争を目撃してきた彼女は、取材のために命がけで行動します。
  • ジェシー・カレン(演:ケイリー・スピーニー):駆け出しの報道カメラマンで、リーに憧れ、最前線での取材に挑む若者。
  • ジョエル(演:ワグネル・モウラ):ジャーナリストで、リーとともに危険な取材旅行に同行します。
  • サミー(演:スティーヴン・ヘンダーソン):リーの師であり、共に行動するが、旅の途中で危険に直面します。
  • 大統領(演:ニック・オファーマン):アメリカの大統領で、内戦の引き金となる人物。

シビル・ウォー アメリカ最後の日感想レビュー

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を見た直後の感想は、正直なところ複雑でした。一見すると単調で退屈に感じられる展開に、多くの観客が戸惑うかもしれません。しかし、この映画の真の価値は、その表層的な物語の奥に潜んでいるのです。

アレックス・ガーランド監督の意図を理解するには、現代アメリカの政治状況に対する深い洞察が必要不可欠です。この映画は、単なるエンターテインメントを超えた、社会的メッセージを強く発信しています。

キャストの演技は秀逸で、特にキルスティン・ダンスト演じるベテランジャーナリストのリー・スミスの存在感は圧巻でした。彼女の演技を通じて、混沌とした内戦下でのジャーナリストの使命と葛藤が生々しく伝わってきます。

映像美も特筆すべきポイントです。荒廃したアメリカの風景が、静謐さと緊張感を同時に醸し出しており、観る者の心に深く刻まれます。

ただし、この作品の真価は、むしろ観た後の余韻にあります。映画館を出た後、脳裏に浮かぶ数々の疑問と考察こそが、ガーランド監督の狙いなのでしょう。

「シビル・ウォー アメリカ最後の日」は、確かに難解で挑戦的な作品です。しかし、現代社会の分断や、ジャーナリズムの役割、そして暴力の連鎖について深く考えさせられる、極めて示唆に富んだ映画だと言えるでしょう。

この作品に対する評価は、観客の政治的見解や社会的背景によって大きく分かれるかもしれません。しかし、それこそがこの映画の真骨頂であり、観客同士の対話を促す狙いがあるのではないでしょうか。

結論として、「シビル・ウォー アメリカ最後の日」は、エンターテインメントとしての即時的な満足よりも、長期的な思考と議論を喚起する作品だと評価できます。アメリカの政治や社会問題に興味がある方、そして映画を通じて深い考察を楽しみたい方には、ぜひ一度ご覧いただきたい意欲作です。

シビル・ウォー アメリカ最後の日ネタバレ考察

内戦の明確な原因を描かない理由とは?

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を見て、「内戦の原因がよくわからない」と感じた人も多いのではないでしょうか。実は、これはガーランド監督の狙いなんだと思います。

映画では、大統領が「3期目」に就任したことが匂わされています。アメリカの憲法では2期までしか務められないので、これはかなりヤバい状況です。でも、それ以上の説明はありません。

このような部分がアメリカに住んでいる人ならわかるんでしょうが、アメリカの政治背景を知らない人にとってはフラストレーションになるかもしれません。

原因をはっきり示さないことで、見る人それぞれの立場で解釈できるようになっています。右寄りの人も左寄りの人も、自分なりの見方で映画を楽しめるわけです。

また、特定の出来事や思想に縛られないことで、より普遍的なメッセージを伝えられるようになっています。

結局のところ、ガーランド監督は「なんでこんなことになっちゃったの?」って私たちに考えてほしいんのではないでしょうか。それを通じて、今の社会の問題にも目を向けてほしいんでしょうね。

この映画は、ただ楽しむだけじゃなくて、見た後にいろいろ考えさせられる作品なんです。内戦の原因をぼかしているのも、そのための工夫だったということですね。

右派と左派が手を組む未来の可能性

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の中で、思わず目を疑ってしまうような設定があります。それは、テキサス州とカリフォルニア州が手を組んで「西部勢力」を作り、連邦政府と戦うというものです。

アメリカの政治事情を知っている人なら、「えっ、それって現実的なの?」と思うかもしれません。テキサスといえば共和党(保守派)の地盤、カリフォルニアは民主党(リベラル派)の stronghold(強固な支持基盤)ですからね。政治的に水と油のような二つの州が協力するなんて、想像しにくいですよね。

でも、アレックス・ガーランド監督はこの設定に、重要なメッセージを込めているんです。監督はインタビューでこんなことを言っています。「この映画は、観客に問いかけているんです。『なぜ民主党と共和党が「ファシズムは悪い」って合意して協力するのが、そんなに想像できないんだろう?』って。」

つまり、今のアメリカの政治って、左右の対立が激しすぎて、共通の敵が現れても協力できないくらい分断されちゃってるんじゃない?って警告しているわけです。

この設定は、僕たちにも大切な質問を投げかけています。「政治的な意見の違いより、民主主義や自由っていう根本的な価値観の方が大事じゃないの?」って。

ガーランド監督は、極端な状況になれば、今まで敵対していた勢力同士でも手を組む可能性があるって希望を示しているのかもしれません。

同時に、この設定は観客である私たち自身の政治的な立場も問い直させられますよね。「自分が支持してる政党が、昔の政敵と組んだら、本当に受け入れられるかな?」って。

結局のところ、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』でのテキサスとカリフォルニアの同盟は、単なるSFの設定じゃなくて、今の政治的な分断を乗り越える可能性を示す大事な要素なんです。この斬新な設定で、監督は私たちに政治的な対立の本質や、共通の価値観の重要性について、もう一度よく考えてみてって言ってるんじゃないでしょうか。

ジャーナリズムの役割とその衰退

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』では、ジャーナリズムの役割とその衰退が重要なテーマになっています。

映画の主人公たちは、危険を顧みずに戦地に向かうジャーナリストたちです。彼らの姿を通して、ガーランド監督は現代のジャーナリズムについて考えさせようとしているんです。

監督自身、ジャーナリストの家庭で育ったそうです。だから、報道の自由や真実を伝えることの大切さをよく知っているんですね。でも、今のジャーナリズムはかつてほどの力を持っていません。

映画の中で、ベテランジャーナリストのリー・スミスは「昔は新聞に書かれたことを皆信じていた」と言っています。でも今は違います。ソーシャルメディアの普及で、誰でも簡単に情報を発信できるようになりました。その結果、何を信じていいのかわからなくなってしまったんです。

ガーランド監督は「自由な国には自由な報道が必要で、それは贅沢品ではなく必需品です」と語っています。つまり、ジャーナリズムは民主主義を支える重要な柱だと考えているんですね。

でも、映画の中のジャーナリストたちは何度も命の危険にさらされます。これは、現実世界でジャーナリストが狙われる事件が増えていることを反映しているんです。

結局のところ、この映画は「ジャーナリズムの衰退は社会にとって危険だ」というメッセージを伝えようとしているんです。真実を伝えるジャーナリストの存在が薄れると、どんな悪い政治家でも権力を握れてしまう。そんな危機感が『シビル・ウォー アメリカ最後の日』には込められているんですね。

この映画を見て、私たちも「ジャーナリズムって本当に大切なんだな」って考えさせられます。そして、「どうやって良質なジャーナリズムを守っていけばいいんだろう」という問いも突きつけられるんです。

ジェシーの成長とリーとの関係が示すもの

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』では、新人ジャーナリストのジェシーと、ベテランのリーの関係が印象的です。この二人の関係から、ガーランド監督は私たちに何を伝えようとしているのでしょうか。

まず、ジェシーの成長過程を見てみましょう。彼女は戦場カメラマンになりたいという強い意志を持っています。でも、最初は危険を顧みず、ちょっと無謀な面もありました。そんな彼女を、リーが時に厳しく、時に優しく導いていきます。

この関係、ガーランド監督自身の経験が反映されているんです。監督も若い頃、海外特派員を目指していたそうです。そして、経験豊富なジャーナリストに導かれたんだとか。つまり、ジェシーは若き日の監督、リーは監督を導いたジャーナリストをモデルにしているんですね。

でも、ジェシーの成長には複雑な面もあります。彼女は確かにスキルを身につけていきますが、同時に戦争の残酷さにも慣れていってしまう。これって、本当に「成長」と言えるんでしょうか?

ガーランド監督は「若者が望むすべてを手に入れようとする姿を見ると、むしろその若者のことが心配になる」と言っています。つまり、ジェシーの「成長」は必ずしも喜ばしいものではないかもしれないんです。

リーとジェシーの関係は、ジャーナリズムの世代交代も表しています。経験豊富な先輩から若い世代へ、知識や技術が受け継がれていく。でも同時に、新しい時代の課題も浮かび上がってくる。

結局のところ、この二人の関係は「ジャーナリズムの未来」を象徴しているんじゃないでしょうか。真実を伝えることの大切さは変わらない。でも、その方法や心構えは時代とともに変化していく。そんなメッセージが、ジェシーとリーの関係に込められているように思えます。

この映画を見て、私たちも「ジャーナリズムって何だろう」「真実を伝えるってどういうことだろう」って考えさせられますよね。ジェシーとリーの関係は、そんな問いを投げかけているんです。

暴力と人種差別が絡み合う社会の恐怖

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の中で、特に衝撃的だったのは、ジェシー・プレモンス演じる正体不明の兵士が登場するシーンですね。このシーンは、暴力と人種差別が絡み合う社会の恐怖を生々しく描き出しています。

この兵士は「What kind of American are you?(お前はどういう種類のアメリカ人だ?)」と言いながら、アジア系のジャーナリストに銃を向けるんです。これって、単なるフィクションじゃないんですよ。現実の世界でも起こりうる、怖い出来事なんです。

ガーランド監督は、この兵士を明らかに人種差別主義者として描いています。でも、意外なことに、アメリカでも多くの観客はそこまで気づかなかったみたいなんです。これって、私たちの社会で人種差別がどれだけ見過ごされているかを表しているんじゃないでしょうか。

監督は、トランプ元大統領が新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼んでいたことを引き合いに出しています。言葉の暴力が、実際の暴力につながっていく。そんな恐ろしい連鎖を、この映画は描き出しているんです。

実は、この問題は映画の中だけの話じゃありません。2021年1月6日に起きたアメリカ連邦議会議事堂襲撃事件以降、暴力的な言動が実際の行動につながるケースが増えているんです。

この映画を見ていると、「暴力的な言葉は、やがて暴力的な行動となる」という警告が、ひしひしと伝わってきます。差別的な言葉や考えが、どんどんエスカレートしていって、最後には取り返しのつかない暴力につながっていく。そんな恐ろしい社会の姿が、映画の中に描かれているんです。

結局のところ、この映画は私たちに問いかけているんじゃないでしょうか。「あなたは差別や暴力の連鎖に、どう立ち向かいますか?」って。簡単に答えが出せる問題じゃありませんが、考え続けることが大切なんだと思います。

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、エンタメ映画の枠を超えて、私たちの社会が抱える深刻な問題に光を当てているんです。

報道写真のパワーと「真実」の意味

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』では、報道写真の持つ力と、「真実」とは何かという問いが深く掘り下げられています。

映画の中で、写真は重要な役割を果たしています。特に印象的なのは、血を流しながら拳を突き上げるトランプ元大統領の写真ですね。これ、実際にあった出来事をモチーフにしているんです。

ガーランド監督は、「写真は今日でもパワフルなイメージになります」と言っています。確かに、1枚の写真が世論を動かすことはよくありますよね。でも、その一方で「写真は必ずしも真実とはいえない」とも語っているんです。

なぜかというと、写真はトリミングできるからです。つまり、撮影者が切り取りたい部分だけを見せることができるんです。そう考えると、写真って「選択的な真実」なのかもしれません。

面白いのは、人々が写真に自由に物語を見出すことです。例えば、トランプ元大統領の写真。人によっては英雄に見えるかもしれないし、別の人には暴力的に見えるかもしれない。同じ写真なのに、見る人によって全然違う印象を持つんです。

これって、今の情報社会の難しさを表しているんじゃないでしょうか。ソーシャルメディアの発達で、誰もが簡単に情報を発信できるようになりました。でも同時に、何を信じていいのかわからなくなってしまった。

ガーランド監督は、1970年代は新聞に書かれたことを皆信じていたけど、今は違うと言っています。つまり、「真実」の捉え方が変わってきているんです。

でも、だからこそジャーナリズムの役割は重要になってきているんじゃないでしょうか。単に写真を撮るだけじゃなく、その背景や文脈を正確に伝える。そんなジャーナリストの仕事が、今まで以上に大切になっているんです。

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を見ていると、「真実って何だろう」「報道の役割って何だろう」って考えさせられます。簡単に答えが出る問題じゃありませんが、考え続けることが大切なんだと思います。

日本でも偏向報道が話題になることがよくあります。マスゴミなんて呼び方をする人もいますね。真実は自分たちで考える必要があるのではないでしょうか。

この映画は、エンタメとしての側面もありつつ、私たちに深い問いを投げかけているんです。そこがガーランド監督の狙いなんじゃないでしょうか。

観客へ問いかけるものとは?

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、観客に多くの問いを投げかける作品です。ガーランド監督は、この映画を通じて私たちに何を考えてほしいのでしょうか。

まず、監督は「観客に会話をしてもらいたい」と言っています。普通の映画だと、すべての問いと答えが物語の中に含まれていますよね。でも、この映画はあえて答えを示さず、観客自身に考えてもらおうとしているんです。

特に興味深いのは、右派と左派の両方の観客に向けたメッセージです。監督は「右派と左派の観客が喧嘩をせずに議論できるような、双方に共通点がある映画をつくりたかった」と語っています。今の世の中、政治的な対立が激しくなっていますよね。そんな中で、対話のきっかけを作ろうとしているんです。

例えば、映画の中でカリフォルニア(伝統的に民主党支持)とテキサス(伝統的に共和党支持)が手を組む場面があります。これって、「民主党と共和党が『ファシズムは悪だ』と同意して手を組むことが、なぜそれほど想像できないのでしょうか?」という問いかけなんです。

また、この映画は現代社会の問題を反映しています。分断、ポピュリズム、フェイクニュース、ジャーナリズムの危機など、今の世界が抱える問題が凝縮されているんです。でも、それらの問題に対する答えは示していません。代わりに、観客自身に「どうすればいいんだろう」と考えてもらおうとしているんです。

ガーランド監督は、この映画が「警告」の役割を果たすことを望んでいます。過激主義やポピュリズムの政治家に注意を促し、社会の分断がどこまで進むと取り返しがつかなくなるのかを示唆しているんです。

でも、単に危機感をあおるだけじゃありません。「願い事には気をつけなさい」という言葉を引用して、私たちの選択や行動が社会にどんな影響を与えるのかを考えさせようとしています。

結局のところ、この映画は「あなたはどう思う?」「あなたならどうする?」と、私たち一人一人に問いかけているんです。簡単に答えが出せる問題じゃありませんが、考え続けること、そして対話を続けることが大切だというメッセージが込められているんじゃないでしょうか。

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、エンターテインメントとしての側面もありつつ、社会や政治について深く考えさせてくれる作品なんです。それこそが、ガーランド監督の狙いだったんだと思います。