正直なところ私には夢とか明確なビジョンはない。
西洋的な成功哲学に
影響された現代社会において
「5年後の目標」
「10年後のビジョン」
これが持てない自分に
劣等感を抱いていたこともある。
「目標がない」と検索すると
出てくるのは
目標の持ち方、作り方
という解決策だ。
そんなコンテンツをもとに
これまで何度
目標設定シートなるものを
書いてきただろう。
書いたところで
何かしっくりこない
燃え上ってくるものもない
しかし、この本を読んで
5年後、10年後の自分の姿を
明確に描けなくても
それはそれでいいのだと
思えるようになった。
肩の力が少し抜けた。
そもそも西洋世界と日本では
スタートからして違うのだ。
西洋世界では
全知全能の神が
世界を作った。
一方、日本はまず世界があって
そこに神が生まれた。
どうやって世界が生まれたのか
日本の神話にはその説明がない。
スタートからしてあいまいなのだ。
日本の神は
生まれたときには世界があって
与えられた環境の中で
生きていくしかなかった。
この環境の違いから
西洋世界と日本の価値観が
異なったものになるのは当然だ。
全知全能の神が作った
世界に住む人々は
自分の力で人生をデザインする
自己責任の価値観を
持つようになった。
一方、日本人は
起こった出来事を受け入れる
という価値観を持つようになる。
そこから生まれた生き方が
天命追求型の生き方だ。
与えられた個性を
人のために使い
さらに個性を磨くうちに
新たな出会いがあり
違うステージに運ばれていく。
そして自分にもっとも
ふさわしい場所に導かれる。
この天命追求型の生き方をしたのが
例えば豊臣秀吉ではなかったか。
戦国時代を制した秀吉だが
その出自は極めて貧しく
一介の百姓の子に過ぎなかった。
10代後半の秀吉に
思いがけない機会が訪れる。
織田信長の下で
下働きをする道が開けたのだ。
ここで秀吉は持ち前の機転を活かし
主君の草履を体温で暖めるなど
細やかな心配りを怠らなかった。
この献身的な姿勢が実を結び
秀吉は次第に頭角を現していく。
約20年の歳月を経て
一介の下働きから大名へと上り詰め
最終的には日本統一という
偉業までも成し遂げたのである。
しかし、秀吉は当初から
天下人を目指していただろうか?
おそらくそんな大それたことは
考えていなったはずだ。
草履を暖めた行為も
遠大な野望からではなく
ただ主君の役に立ちたいという
純粋な思いからだったはずである。
つまり、目の前の仕事に
全身全霊を傾けること。
そして与えられた役割を
全うしようとする姿勢こそが
思いもよらぬ大きな結果へと
つながっていくのだ。
明確な目標を持つことは
素晴らしいことだ。
しかし、たとえそれがなくとも
今この瞬間に真摯に向き合い
全力を尽くすという姿勢さえあれば
必ず道は開かれていく。
この本には
天命に運ばれる生き方を
実現する上で
大切な心の持ち方について
平易な言葉でわかりやすく
書かれている。
2時間ほどでスラスラ読めるのに
内容の密度は半端ない。
目標設定型の人生が
何となくしっくりこない
そんな想いを抱いている人には
ぜひ読んでみて欲しい。